2016年5月19日木曜日

アジアにおける平和と和解の会


ぱっとしない天気が続いているパリですが、いかがお過ごしでしょうか。
今朝も雨、日本の梅雨のような長雨が続いています。
湿度も、パリにしてはかなり高いようです。

さて、昨日はとても良い会合に参加しました。
パリの日本人カトリックセンターにて、「アジアの平和と和解のための会」を主催したのです。
この会は、責任者である夫と、韓国人のシスターとの協力と呼びかけのもと、去年から始まった会です。大体3ヶ月ごとに行っています。
私は、長く日本にいて留守だったので、久しぶりの参加となりました。

今回の分かち合いの材料として選んだ、ネルソン・マンデラ氏の映画をまず見ました。
ご存知のように、彼は長年にわたる黒人差別の歴史(アパルトヘイト)をなくした、まさに歴史上の大人物です。映画は、その彼が大統領に選出された後の物語で、私は初めて知ったのですが、彼は大のラグビーファン。南アフリカのラグビーチームを、何とか強くしたいと模索します。そのチームは、1人を除いて全員が白人で構成されているため、試合があっても、国内の黒人たちは、相手方の黒人の選手やチームを応援する始末。これは何とかしなければならない。
マンデラ氏は、大統領になる前は、30年間も、離島で牢獄生活を強いられていました。しかしそんな艱難辛苦の最中にあっても、彼は本を読み続け、自分を励ましていたのです。もちろん、今は流暢となっている英語も、彼にとっては敵の言語。でもそれを熱心に習得したのです。そして、「ゆるし」こそが、最大の武器であり、和解への道であることを体得します。そうした苦しみの中から得た彼の信念は、揺るぎのないものでした。そのことを、まずラグビーチームのキャプテンに伝えるのです。結果、次々とチームは強豪の相手チームに勝利し、ついに、ワールドカップの決勝戦において、もっとも手強い相手であったニュージーランドに辛くも勝利します。そして、応援しなかった国内の黒人たちも一緒に大喜びをし、白人との和解にも成功しました。

今でこそ、白人と黒人が共存しているのは当然の世界となっていますが、当時の南アフリカでは、人口の90パーセント近くを占める黒人は、同じ人間として扱われていなかったのです。
「ゆるし」こそが最大の武器であり、最良の道であることを、マンデラ氏は、身をもって証明したのでした。試合終了後に、マンデラ氏とキャプテンが、互いに「国のために成し遂げたこと」を、握手しながら喜んだ場面は、本当に感動的でした。そして応援していた大観衆が、黒人と白人とが手を取り合って大喜びしてるシーンで終わっています。


差別により、迫害を受けている人々の側から「ゆるし」を示すということは、
普通の感覚でいったら到底考えられないことです。
そこに至るまでの道のりも、大変な憎しみと苦しみを経ているはずです。
憎しみを持ち続けていたら、永遠に、この苦しみは終わらないし、和解はあり得ません。
マンデラ氏は、その叡智によって、ゆるすことによってしか、その地獄の苦しみから解放されないことを悟ったのだと思います。

映画を観終わってから、アジアの友人たちと、持ち寄りの食事を食べながら分かち合いをしました。
ここではどんな分かち合いをしたかは省きますが、やはり、この会の存続が、アジアにおける平和の一つの証となるようにしたいという意見で一致しました。

日本にいる日本人には、中々分かりづらいことかもしれません。
しかし、フランス・パリという異国の地に、同じアジア人同士が集まって、平和について話し合うということが、いかに貴重で(語弊があるかもしれませんが)面白いことか、昨日は特にそれを感じました。参加者は、中国人の神父、韓国人の学生(女性)、台湾人の助祭、そして日本人は4人でした。日本人のお年寄り一人を除いて、皆、カトリック教徒です。
ただのアジア人同士ではなく、同じ信仰をもった人同士の集まりということも、この会の大きな特徴でしょう。つまり、キリストを仲介とした神の愛を信じている人同士だからこそ、過去の歴史をもってしても、深く共感しあえるのだと思います。
残念ながら、パリにいる日本人でも、他のアジアの人々、特に韓国人や中国人を嫌う人はたくさんいます。本当に残念だと思います。昨日の分かち合いの場は、本当に心癒される、フランス語でいうところの、convivial な和やかなものでした(一場面で、議論がありましたが)。
何より私にとっては、パリにいながらにして、フランス語を話す相手が、同じ黒髪と黒い目をした人種であったということが楽しく、快いものでした。そこに、一人でもフランス人がいたら、あそこまでのリラックス感は得られなかっただろうと思います。

久しぶりに、心が洗われるような経験をしました。



最後に、マンデラ氏が、愛読した、イギリス人の詩人 William Ernest Henley (1843-1903) の詩の、最後の部分を引用したいと思います。(ここはフランスなので、フランス語に訳したものをご紹介します。)
Je suis le maître de mon destin
Je suis le capitaine de mon âme

《わたしは自分の運命の主人である。
わたしは自分の魂のキャプテン(舵取りをする人)である。》


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