2016年10月3日月曜日

ギメ美術館 Le Musée Guimet


連続の更新ですが、昨日も外出をしたので載せてみます。

さて、写真にあるのはギメ美術館。
この日は月の第一日曜日ということで、パリ市内の美術館は、全て入場無料となる日に当たっていたため、この美術館を選びました。
日本の浮世絵が展示されている期間でした。


ギメ美術館は、東洋の美術品のみを扱う美術館として名高く、ここに来ると、古代ギリシャから連綿と続いてきた芸術や宗教の流れが、各部屋ごとに展示されており、特に仏教の源泉、アジアへと流入されていく間の変遷が、よく分かるようになっています。
仏教は、中国が源泉ではなく、インドであることは知っていましたが、世界で一番古い仏像は、ガンダーラ(現在のアフガニスタンやパキスタンの辺り)にあったことを発見した時は衝撃でした。その仏像が、西洋人的な彫りの深い顔、たとえばアポロンの顔をしているのです。文明でいうと古代ギリシャであって、ここからアジアへと広まって行くうちに、アジア的な顔になっていったということです。
世界は繋がっているな~、と、その壮大な時空間を思い、しばしうっとりとなってしまいました。

右下の写真は、北斎を中心とした浮世絵が展示されている部屋で、部屋の奥には春画もありました。
笑ってしまったのは、18歳以下、立ち入り禁止の札があったことで、入る前は「そんなに?」と思っていましたが、なるほど、結構あからさまな作品が多くありました。
夫と二人して、「こんな春画をたくさん展示する意味がどこにあるんだろう?」と首を傾げることしきり。
「日本人のこと誤解するよね」と夫。「え~、もう既に誤解されまくってるでしょ」と私。

この春画を含めた浮世絵展は、「Miroir du désir」(欲望の鏡)と名づけられていて、その命名に、感心しました。

もともと、浮世絵という版画自体、日本では(当時は)高い文化とは違うものとしての扱いだったのが、西洋人がその魅力を発掘した、ということで、そういう意味では春画も興味深いのかもしれません。日本で珍重されていた墨絵による風景画は、西洋では受けなかったということです。西洋では、人物画に比べて風景画は価値が下がるのだとか。
国によって、芸術作品の価値も違うのだ、という事を改めて感じました。

私個人としては、葛飾北斎が同じ墨田区、両国あたりの生まれということで、親しみがあります。
両国駅には江戸東京博物館という、やはり江戸文化を中心とした博物館がありますが、その建物から真っすぐに伸びている大通りは、今では「北斎通り」と名づけられ、道も、私が小学生のころとは打って変わり、きれいに整備され、立派な通りとなっています。40年近く前には、あの通りは歩道と車道の区別すらない、しかし車の往来の激しい、危ない通りでした。亀沢に住む同級生と一緒に、ランドセルをしょって手を繋いで歩いて学校に通いましたが、車が危なくてよく後ろを振り向いたものです。
近々、「北斎美術館」なるものもできるそうで、今夏、建築中の様子を兄と見に行きました。
左の写真にある芸者は、両国で人気の女性だったらしいのですが、この絵をじっと眺めているムッシューがいて、うん、こういうスタイルなら西洋人にも受けるよね、と思いました。

 
右の写真は美しい櫛の展示です。
父は生前、よく「一髪」と言っていました。つまり、女性の美しさは髪の毛から、ということで、入院がちだった母の代わりに、よく私の髪を梳いてくれていました。
なので今でも猪の毛のブラシで髪の毛をブラッシングするのが習慣となっています。


こちらは館内にある図書館。といっても貸し出しをしている訳ではなく、美術品の一部としての展示のようです。
図書館という場所も、また魅力のある空間ですね。この本が整然と並んでいる様子や、古い本の匂い、そして独特の静寂などが好きで、子供の頃からどこの図書館でも行くのが好きでした。

とにかく、このギメ美術館に来たのは、何年ぶりか、というぐらいなので、特別展以外は変わっていない展示品に、懐かしさを感じました。

ここは、メトロでいうと、イエナ( Iéna ) にあたり、9番線です。なのでうちから1本で行けるわけですが、パリの東から西(中央)に行く感じになるので30分近くは乗るでしょうか。(直線距離にするとたいしたことはないのですが)

夫は、「16区だぜ~!」などと、肩で風を切って歩いていましたが、私はあの美しい街並みが大好きです。 日本人がよくここに住んでいるのは、日本の企業から派遣されている人たちだからで、今では大分、人数が減ったようです。普通の日本人が自力でここに住むのはちょっと無理があると思います。高級なアパルトマン、もちろんお金を出せば手に入りますが、そこを維持し続けるのは、至難の業です。外観はとても素敵でも、住むためのメンテナンスは、日本人にとっては想像を絶するもので、よく日本のテレビで「シャトーを買った日本人」などともてはやしますが、当のご本人は、相当の苦労をしていると思われます。シャトーに限らず、16区辺りのアパルトマンは、歴史的な建造物としての扱いになるので、その外観の維持を始めとして、常に良い状態に保つ「責任」と「義務」があるのです。そこら辺の認識の甘い日本人が、下手に手を出すと、数年で手放さざるを得ない状況に追い込まれます。

実際、見ると住むとでは大違いで、
外観は素晴らしいけど住みにくい(いつもどこか故障している)、スーパーは遠いし、魚を焼こうものなら匂いですぐ苦情がくる、とは実際に住んでいたことのあるマダムです。

こんな話を聞いて、溜飲を下げるしかないんでしょうね。それに16区とひとくくりに言っても、大きいですから庶民的な地区もあるということですし。

美術館紹介のつもりが、とんだ話に展開してしまいました。すみません。。






 









0 件のコメント:

コメントを投稿