今日も日中は良く晴れました。
時々思い出したように降る雨が、お天気雨と言うところ、夫なぞは「狐の嫁入り」とか言ったりします。時々、夫と話をしていると、「一体いつの時代の話だ?」とか、「ね~、年いくつだっけ?」と問いただしたくなるほど、昔のことを良く知っている人なのです。
うちの本棚を知ってる人はうなずける話だと思いますが、やはり小学校6年生でパリに来たものですから、娯楽といえば、ご両親が携えてきた古典や良書を読むしかなかった訳です。なので、時々、びっくりするやら、勉強になるやらで、飽きません(*^_^*)
写真は、もうお馴染みの、家の近所のナシオン広場。でもこの角度からは初めてだと思います。左手の方角に、6番線のメトロの乗り口がある、という場所です。
つい先だってまで大きな花をたくさん、どっしりと咲かせていたマロニエも、今や花はすっかり終わり、葉が青々と茂っています。青空に映えている雲も、もう夏の雲ですね。
これから先、当分読書は無理と先を見越して読んだ本を、ちょっとご紹介します。
森鴎外の「山椒大夫」、「舞姫」、「阿部一族」を読みました。まさに日本の古典ですね。
まず「山椒大夫」ですが、これは子供の教科書などには、「安寿と厨子王」と改題されて載っていますので、ご記憶の方も多いと思います。いわゆる感想文ではないので、私心としてだけ書きますが。
これを読むと、昔の日本の悲惨さ、というのは、現代の悲惨と質が違うだけじゃなく、救いというものがない、と思いました。更にいえば、フランスの作家のアルベール・カミュが提唱した、「不条理」という言葉そのままに、日本語的にいえば、理不尽、ということなんでしょうが、それがあからさまであった、ということです。安寿と厨子王の2人の子供たちはもちろんのこと、その母親とお付の女中という、とても人情の厚い、無垢な人たちが、人買いという悪人の手にあっさりと騙されてしまい、親子離れ離れになったり、それだけではない悲惨さが次々と降りかかっていく訳ですが、「なぜ、何の罪もない人がこのような仕打ちを受けなくてはならないのか?」という湧き上がる問いに対しての答えは、一切ありません。
これは、キリスト教を信仰する際にもネックになる事柄ですが、あの、3・11の一連の悲惨に答えがないのと同じだろうと思います。 ただし質が違うと思うのは、現代と昔では、生活の質が違いますし、厳とした階級社会であったことがあげられるだろうと思います。もちろん、どっちが悲惨かという意味でも、客観的にいっても昔(大昔ですね、平安時代だそうです。) の方が悲惨だったと思います。反論、意義を唱えたい方は、実際にお読みになってみてください。
この本で取り上げたい個所は、いろいろあって困るのですが、やはり最後、厨子王が盲目となってしまった老いた母親と、ついには再会する場面です。
母親は、ぼろをまとって、百姓家の前にむしろを敷いた上で、木の枝をたたいて寄ってくる雀を追っていたのですが、その間ずっと、安寿と厨子王のことを恋い慕う言葉を口に、歌っていたのです。
それを聞いた厨子王は、「うっとりとなって、このことばに聞きほれた。そのうち臓腑が煮え返るようになって、獣めいた叫びが口から出ようとするのを、歯を食いしばってこらえた。」のです。
そして詳細は避けますが、ようやく、親子の再会が果たされます。
「救いがない」と書きましたが、確かに最後は救われます。でも、そこに至るまでに父親は死に、安寿も自殺をしています。そして母親は、盲目になって、乞食同然の暮らしを強いられていた訳です。救いと言うには、あまりにも犠牲が大きいな、と思います。
すみません、ちょっとご紹介のつもりが、長くなってしまいました。
次に「舞姫」ですが、これは、私は初めて読んだ小説となります。「これも教科書に出てるでしょう?」と夫は言いますが、記憶にありません。そして実際に読んでみますと、想像していたのと全く違ったので驚きました。今読んだ後に思うのは、明治の時の鹿鳴館のような華やかさをイメージしていたのです。全然違いました。この本に関してはあまりネタバレしないようにしますが、これは森鴎外の実際に身に起こったことと、非常に近い、いわば私小説だそうです。その点では双丘の、夏目漱石と酷似していますが、洋行先での経験が違いますね。2人共が、心身病になってしまうところも同じですが。。
やはりあの頃の、海外留学というのは、今の日本では想像を絶するほど、大変な時間と精神的圧力があったということですね。今でさえ、海外に来ることで病んでしまう人は後を絶たないのですから、昔はもっと深刻でした。
しかし、日本という祖国を出ることで、初めて知る自分の本性だとか、目標だとかが見えるものですから、それは今も昔も変わらないと言えるでしょう。現代人は甘っちょろくなってますから(私ももちろん含めて)、それはそれで、便利になった世の中とはいえ、大変さは同じなのかもしれませんが。
とにかく、想像していた華やかさは一切なかった、とだけ記しておきます。
最後に「阿部一族」です。
これは、この3作の中で、一番読みごたえがあって、面白いものでした。
なので、日を改めて書きたいと思います。(いつになることやらですが。)
しかし一言。昔の(舞台は、江戸時代、徳川の三代目の将軍、家道の時代です。)日本は、階級がしっかりとありましたが、でもそれと引き換えに、忠義とか人情というのが確かにあったということです。これだけの忠誠心は、あっぱれと思いますし、死に際も潔かった。まさに武士道ですね。
そして「末代までの恥」とか、「お家とり潰し」という文化が、一方で徹底して根付いていたために、相当な覚悟での生き様、というのが、どの身分の人にもあった、ということです。
長い文を最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
写真は、私たちの住んでいるアパルトマンの中庭に咲いているバラです。何の変哲もないバラですが、バラはバラ。(元)バラマニアとしては、嬉しいものです。
では失礼します。
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