目の前の、眼下に見える公園の木々も、黄葉真っ盛りとなりました。
なんやかんやと時は過ぎて、秋も終盤、街では早くもクリスマスの装いとなっています。
今年はデパートのショーウィンドーで、どんな飾り付けや仕掛けが見られるでしょうか。近いうちに見に行こうと思います。
今日は、久しぶりに日の光が差す、明るい空となっています。
最近、日本の通信講座で、海外在住の日本人にむけたものを一つ、「家庭料理」を受講しています。
特に、和食についての基本的な知識を学びなおしたい、というのが最大の理由ですが、実際につくろうとすると、かなりの障害があることに気づかされました。
それはどういう事かというと、まず、和食に使う食材が、パリでは簡単には手に入らない、という事です。もちろん、通称日本人街と言われるオペラ街に行けば、ある程度のものは手に入るのですが、そこに行くまでの手間や時間を考えると、やはりもったいない感じがします。
例えば、その通信講座でつくらなくてはならない課題料理に筑前煮があるのですが、具として普通のスーパーで手に入るのはニンジンと鶏肉ぐらいです。その他の、干ししいたけやレンコン、ごぼう、竹の子、こんにゃく、絹さやなどは、売っていません。しかも鶏肉は、ささ身以外は全部骨付きですから、骨から肉をそぎ落とすという、肉をさばく必要があります。これが結構厄介なのです。
写真は、友人との昼食につくった、これも課題料理の一つ、五目炊き込みご飯と味噌汁、そして友人が持ってきてくれたヒヨコマメのサラダです。
友人の手料理は、もちろん、パリの普通のスーパーで手に入るものばかりで作られていましたが、五目炊き込みご飯は、やはり、簡単には手に入らない食材を多く使いました。
重ねては書きませんが、ご飯の上に彩りとして乗せた香菜は、実は三つ葉の代用品。同じアジアでも、中国系の食料品店は、街のあちこちにありますから、そこでは東南アジアのものも売っているのです。
こちらは ほうれん草のおひたし。
日本でもこの時期はほうれん草、手に入りづらいか、高いかもしれませんが、小松菜とか他の葉物があると思います。パリではこれも、上記した日本か韓国の食料品店に行かないと手に入りません。削り鰹もしかり。
パリで和食をつくるのが如何に困難か、ごく一部の例をとって説明しました。
驚いたことに、和食では「ほとんど肉を使わない」ということも発見しました。教材の料理本を見ても、使っている料理はまず肉じゃが、そして筑前煮ですが、あと代表的なのが豚の角煮(これはとても作りやすいです、和食用の調味料がそろっていれば)、しゃぶしゃぶ、すき焼き、鍋の水炊き、ぐらいでしょうか。あとは動物性の蛋白源としては全部、魚です。このこともまた、パリでは美味しい魚が手に入りにくいということで、ハードルが高くなっています。
なので、フランスに住む日本人は、やはりどうしても、フランス料理を普段には食べざるを得ない、ということになります。特に、和食、主食のご飯ですが、それが苦手なフランス人男性と結婚している日本女性は、ほとんどの食事をフランス料理にしていると思われます。こんなに手の込んだ、しかもお金もかかる和食をフランスで普段の食事につくるのは、そう、フランス語で言えば、raisonable なことではないのです。
上の写真は、なんとか、和食っぽい食事、もどきをつくったものです。
お味噌汁の油揚げも、手に入りづらい食材ですが、冷凍庫にまとめて常備してあるものを使いました。ワカメもしかり。韓国製の乾燥ワカメです。
メインの魚は缶詰(フランス製、鯖です)、トマト、巨大なさやえんどうもフランス製。お米も南仏、カマルグ産です。
世界各国の食材が、簡単に手に入る日本のスーパーとは大違い。
食事一つとっても、日本人が海外でも暮らしづらいということが、お分かりいただけたでしょうか?
きっと、「私はパンが大好きだから大丈夫」とか、「毎日肉でもへっちゃら」という感想がおありだと思います。でもそれは海外といえでも期間限定で暮らしている人の感想であって、永住を決めている日本人にとっては、ご飯やお味噌汁の味というのが、いかに本来の日本人の味覚、体質に合致しているかを、身を持って知っているのです。
もちろん、慣れもありますから、何十年と暮らしている間に、パンとチーズとワインの生活に、すっかり馴染んでいる日本人たちもいます。でも私自身は、和食をつくる機会というのが一年を通して何回かあるので、習って良かったと思っています。
肉じゃがもどきです |
パリで和食をつくるのは、 単なるノスタルジーのなせる業なのかもしれません。
でも和食は世界に冠たる料理。そして日本人にとってはおふくろの味です。ぜひ、つくり続けて行きたいものです。
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