先日のデュノワイエ神父様の訃報により駆けつけた、モントーバンの街並みと、そこから車でおよそ30分のところにあるモワサックの町のご紹介を致します。
先週の日曜から火曜日にかけて、計3日間の旅でしたが、今と同様、連日、日差しの強い猛暑でした。モントーバンは、近年、TGVが停まるようになり、しかも Montparnasse 駅(モンパルナス)から Toulouse 駅(トゥールーズ)行きの直通で行けるようになりました。途中、Bordeaux 駅(ボルドー)や Agen 駅(アジャン)に停まるとはいえ、パリから丸5時間。結構な長旅です。
写真はモントーバンの町の中心にある広場です。
この広場を囲むようにして建物が並んでおり、日本でいうところの1階部分(地上階)は、回廊になっています。こうした町の作りは、フランス、引いてはヨーロッパによく見られる形式です。
こうして回廊の中に入ると暗く、そして何より日差しが遮られるのでとてもひんやりしています。
これは石造りの建物の最大の利点の一つだと思います。
この回廊の並びにあるカフェの一つで私たちは度々休憩するために立ち寄り、そのことで、カフェを切り盛りしているマダムと大親友のようにして冗談を言い合ったりする事ができました。
そうした、気さくな間柄をすぐに結べるというのは、南仏ならではないでしょうか。あるいは本来、フランス人というのは情に深いものであって、パリにいるとそれが前面には出にくくなっているだけなのかもしれません。
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Glorification de la croix (十字架の栄光) |
こちらは飛んでモワサックの L'Abbaye Saint-Pierre (聖ペトロ大修道院)の le cloître (列柱廊ー修道院の方形の中庭を囲む、柱の並んだ回廊)に並んでいる柱の頭部分です。
モントーバンにも教会が一杯ありますし、私たちは暑さを避けて休憩する場所として三つの教会を訪れましたが、それらよりも有名な、こちらの教会とその柱廊をご紹介致します。
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L'abbatiale de Saint-Pierre de Moissac (聖ペトロ大修道院付教会) |
私たち夫婦にとっては二度目の訪問になる、このモワサックの町、そして教会と柱廊ですが、最初に訪れたのは、まだデュノワイエ神父様がご存命でおられ、神父様のご提案により訪れたのでした。二度目に降り立ち、その事を思い出しつつ、見学をしました。
これはその大修道院に付属する教会の南側の入り口上部にある le tympan (タンパン)ですが、
その説明を述べる前に、このモワサックの地に始まった修道院の歴史を多少、書き記したいと思います。
この聖ペトロ大修道院は、その歴史を6世紀の聖クロヴィス王にまで遡ることが出来ますが、この地に修道院としての存在が認められたのは、次のカロリング朝の時代、大体8世紀から10世紀ごろと言われています。11世紀の半ばには、かの有名なブルゴーニュにあるクリュニー大修道院との連携が図られ、その事により、修道士の生活というものが一変したそうです。
12世紀の初めには、百人余りの修道士たちがこの地で暮らし、その主な活動は、祈りと、一日に8回もあった礼拝と言われています。当時の書記たちは、修道士たちが祈りに使うラテン語の宗教書や聖書、キリスト教徒たちによるテキストの抜粋や注釈書をコピーし、利用していたようです。そのオリジナルの原稿は、現在パリの国立図書館に保存されています。
写真のタンパンは、柱廊が建築された1100年の、その20数年後に彫られたもので、その図像は、とりわけ聖ヨハネの黙示録にある、沢山のヴィジョンの中の一つに想を得ています。
聖ペトロ教会の内部は、下の階、つまり地上階だけ見学できるようになっています。
石造りの部分は12世紀に造られ、レンガのゴチック形式の部分は15世紀に造られました。
また、この教会に隣接する修道院は、1626年に還俗され、当時のベネディクト修道士たちは在俗会員となりました。それにより、モワサックの、聖ペトロ教会、及び修道院での宗教生活は終わりを告げ、更には1790年、フランス革命後にはこれら建造物が個人に売却され、国の財産になりました。
その後、様々な紆余曲折を経て、1998年に、その柱廊とロマネスク様式のタンパンはユネスコの世界遺産に登録されました。Saint-Jacques-de-Compostelle (いわゆるコンポステラ)への巡礼の道筋としても認められました。
さて、いよいよ柱廊の説明をいたします。
先ほど、この柱廊は1100年に建造されたと書きましたが、これらの柱のすべての頭部に、見事なロマネスク芸術の成果を見ることができます。
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Décor végétal (植物の飾り) |
柱の数は76本、その頭部 (chapiteau) には、その内のおよそ50本に、聖書のエピソードと、聖人たちの一生の物語が彫られています。その他の柱頭には創世記を想起させる、植物や動物が描かれています。
これらの柱頭を一つ一つ見上げながら、
当時の修道士たちの黙想にならい、静かに回廊を歩く幸せをかみ締めました。
この日も気温は高く、外はうだるような暑さでしたが、この回廊はひっそりと静まり返り、私たちの気持ちを静めてくれました。今は亡き神父様の面影を思い起こしながら。
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Le cloître roman de l'abbaye Saint-Pierre de Moissac |
現実に戻ります。
パリは引き続き猛暑、連日30度を超えているだけでなく、夕方には37度になる予報です。
「一体、どうなってるの?」という感じですが、2003年の悪夢(暑さのために、フランス全土でおよそ二万人のお年寄りが亡くなりました。)が繰り返されないことを祈るばかりです。
しかしこの猛烈な暑さも今日の夜までだそうですが、明日以降、気温がぐっと下がるとはいえ最高気温27度の予報で、それがまだしばらく続くそうです。。