Gare de Lyon パリのリヨン駅前 |
この写真を撮った時は、時計台にもあるように夜の9時5分過ぎ。そう、朝の、ではなく夜の9時過ぎです。この写真は、もうひと月近く前なので、今よりは日が長かったのですが、現在パリの日の入りは午後9時ちょっと前と、この写真とあまり変わらない明るさがまだあります。
今年の夏は、珍しく夫婦揃ってパリにとどまっているのですが、考えてみたらこの8月の後半に二人でパリにいるのは初めてのことと分かりました。大抵は夫婦で日本にいるか、夫がヨーロッパ内で仕事で私一人で日本にいるかのどちらかでした。
そのため、3月に寝室を大改造した後の片付け、整理をゆっくりとすることができています。
Maitai au café Lithograohe カフェ「リトグラフ」のマイタイ |
私は基本的にアルコールが飲めない体質なのですが(この世にアルコールというものがなくても全く困りません)、大勢の仲間との席では多少飲みます。空腹を避ければ、ワインはグラスに三分の一ぐらいだったら飲めます。飲むこと自体より、友人たちとワイワイしながらの雰囲気が好きなんですね。
私の斜め前の座席に座っていた黒人のおじいさんが、突然発作を起こして、電車を止める事態に発展したのです。車内はそれほど混んではいなかったのですが、バカンス客がいて、目の前にいたドイツ人の家族がすぐに異変に気がついておじいさんの手当てを始めました。おじいさんの隣に座っていた若い女性は突然のことでパニックとなって叫び出し、車内は一時乗客全員が総立ちとなりました。すぐにおじいさんは車内の床に寝かされ、人工呼吸を若者が始め、その間に非常ベルを鳴らしたり、「医者はいませんか?」の呼びかけが飛び交いました。
幸いにも次の駅でおじいさんは意識を取り戻し、駅員さん達に渡され一命を取り留めました。背後に救急車の音が聞こえる中、ようやく列車が通常通りの運行を再開しました。
ところでその日は、もう一つの感動する経験をしたのです。
Milk shake à la fraise 苺入りミルクシェーキ |
その後、そのことはすっかり忘れて買うべきものを眺めていたら、その彼が、スーパー内をあちこち歩き回って無心をしていることが分かりました。
そのことが分かると胸が痛むのを感じ、彼を呼び寄せてお金を渡しました。自分でもいくら持っているかわからなかったのですが、財布を開けると、20ユーロ札が2枚しかありませんでした。彼の抱えている食べ物は、合計で多く見積もってもせいぜい5ユーロぐらい。でも彼の率直な様子に胸が打たれた私は「これしかないから」と20ユーロ札を1枚渡しました。彼は法外な金額に眼を剥いて私をじっと見たので、その瞳の真剣さにまたまた胸打たれた私も、真剣な目をしてうなずきました。感謝の言葉と共に彼は素早くその場を立ち去りましたが、私はしばし呆然としていました。
パリの事情に詳しくない方は、物乞いに20ユーロあげることがどれほど法外なことか、想像を絶すると思います。逆にわかっている人からは、「馬鹿ね ! 」と言われるぐらいなことです。でも私はそうするしかなかったし、そうしたかったのです。
後で夫から、メトロでの経験を、その物乞いにお金を施すことで、浄化したかったんじゃないの ? と言われ、そういうことだったのかもしれない、と思いました。
Dans la gare de Lyon パリのリヨン駅構内 |
皆様も、夏の間に普段は経験しないことをする機会があったかもしれません。
残り少ない夏を、存分に楽しみましょう ! !